いっしょにたべよう


ある日の夜のこと。
アルフレッドがテレビを見ていると、突然インターホンの鳴る音がした。
「人が折角菊に借りたDVDを見てたっていうのに一体誰なんだい、全く……」
愚痴たれながら玄関に向かいドアを開ける。
するとそこに立っていたのは自分によく似た、しかし性格は対極の青年であった。
「マシューじゃないか!  どうしたんだい、こんな夜に」
「あ、あの、アイスを貰っ……」
「ん?  声が小さすぎて聞こえないんだぞ!」
「えっと、だからアイスを貰ったから一緒に食べようと思って…」
「アイスかい!?  さっそく食べようじゃないか!」
大好物であるアイスと聞いて、アルフレッドはリビングの方へと駆けていった。
子供のようにはしゃぐ彼を見たマシューは、相変わらずだなあ、と思いつつ微笑んだ。

「やっぱりアイスは最高だね!」
アルフレッドとマシューは、元々入っていた容器から皿へと移したアイスをふたり揃って食べ始めた。
ゆっくりと口へ運ぶマシューに対し、アルフレッドは真っ白なバニラアイスにさくさくとスプーンを入れて次々に口へと運んでいた。
「本当だ、おいしいね。今度お礼言っとかなきゃ……」
「なんだいマシュー、全然食べてないじゃないか。食べきれないなら食べてあげるんだぞ!」
いつの間にやら自分のアイスを食べ終わっていたアルフレッドがマシューのアイスにスプーンを持っていこうとする。
しかしマシューは別に自分の文が食べきれないわけではなく、ただ単にアルフレッドが食べ終わるのが早すぎるだけであった。
「待ってよ!  まだ食べたいなら僕の分けてあげるから。半ぶんこしようよ」
「それはいい考えだね!」
「じゃあお皿貸して?  今入れるから」
アルフレッドは目の前にあった皿をマシューに差し出す。
そしてそれにマシューの皿に残ったままのアイスを半分ほど入れてアルフレッドに差し出した。
「どうぞ」
「Thanks,マシュー!」
にっこりと笑みを浮かべながら皿を受け取るアルフレッドを眺めていると、自然とマシューの顔も綻びた。
と、そこでマシューはアルフレッドの口元にアイスが付いていることに気が付いた。
密かに用意していたタオルをアルフレッドの口元へ持っていき、軽く拭った。
「アルったら……。アイス、ついてたよ」
「ほんとかい!?  いやー、全く気が付かなかったよ!」
「そんなに急いで食べなくてもアイスは逃げたりしないよ」
「そんなのわからないんだぞ!  もしかしたら悪い奴がやってきてアイスを盗みにくる可能性だってあるじゃないか!  まあそんなときはヒーローの俺が返り討ちにしてやるんだぞ!」
相変わらずだなあ。
そんなことを思いつつマシューはアイスを再び口に含んだ。
口いっぱいにバニラアイスの濃厚な旨味が広がる。
これはアイス好きなアルフレッドが急いで食べたがるはずだ。
「マシュー、」
「……ん、なに?」
「全く……。君も人のこと言えないんだぞ」
溜息交じりの言葉のあとで、「ここ」とアルフレッドは自分の口元を指差した。
そしてアルフレッドは先程指差した位置と同じところ、マシューの口元の右側に顔を近づけ、ぺろりと舌で拭った。
「それにしてもこのアイス、甘くておいしいんだぞー!」
「な……、アル……っ」
「ん?なんだい?」
「なんだい、じゃないよ……!  普通に拭いてくれたらいいじゃないか…っ」
「気にしたらダメなんだぞ!」
「……っ、いいけど!  恥ずかしい……」
「聞こえないぞ?  もっとはっきり言うべきだよ君は!  あ、そうだまたこのアイス一緒に食べたいんだけどいいかい?」
「反対意見は認めない、んでしょ?  うん、今度はふたつ買ってくるね」
楽しみだとはしゃぐアルフレッドを見て、マシューはまだ少し赤みの残った顔で微笑んだ。

以前のサイトよりも更に前のサイトに載せていた関係で、初稿の執筆日が分からない文のひとつ。