Good night, Good dream


ルートヴィッヒは今日も今日とて仕事に追われていた。
だが、今片づけている仕事も、元はといえばフェリシアーノが悪いのだ。
フェリシアーノが明後日締め切りの書類を今日になって持ってくるから。
しかも理由が“届けに来る途中に可愛い女の子ナンパしていて忘れていた”というもので。
なんというかフェリシアーノらしいといえばらしいのだが、それで迷惑を被るのはこちらなのだ。
だがフェリシアーノにあたったところで仕事がどうなるわけでもない。
そう思い直し、ルートヴィッヒは仕事を再開した。

数分後、勢いよくドアを開け放ち現れたのはギルベルトだった。
「おいヴェスト!  お兄様を構え!」
「無理だ、忙しい。後にしてくれないか」
こうしてギルベルトが入ってくるのはいつもの事。
よっていつものようにうるさい兄を放置し、ルートヴィッヒは顔をあげないまま仕事を続けた。
暫くして、気付かれないようにちらりと兄の様子を見ると、うるさかった兄も大人しくなっていた。
聞こえてくる声からしてどうやらあの小鳥と戯れているようだった。
ようやく集中できる、とルートヴィッヒは一気に仕事に取り掛かった。



そうして仕事がひと段落して顔をあげると、目の前にあったのはギルベルトの顔だった。
「に、兄さん…!?」
「よお、やっと顔あげてくれたな…っておいお前…。ちょっと待ってろよ」
驚いた顔をしたギルベルトは来たとき同様に大きな音を立てて部屋を飛び出した。
「全く、せわしない人だな…」
ドアの開閉はもっと静かにしろといつも言っているのに。
そんなことを考えているとギルベルトが帰ってきた。
手に何かを持っていたような気がしたが、それが何なのかルートヴィッヒにはよく見えなかった。
「そんなに急いでなんなんだ、一体」
「ちょっと上向け、すぐ終わるから」
そう言ったギルベルトはいつの間にかルートヴィッヒの背後に立っていた。
そうしてルートヴィッヒの顎をくいっと持ち上げる。
「何を、……っ」
瞬間、ルートヴィッヒの目にひんやりとしたものが染み渡る。
少し経たないうちにもう片方の目も。
それは確かに冷たくて気持ちいいが、同時にとても目に沁みた。
「どうだ、目薬沁みるだろ?  仕事のし過ぎだ。ちょっとは俺様に構えっての」
「兄さん……」
「ほら、ひと段落ついたんだろ?  俺が膝枕してやっから寝ろ」
ギルベルトはルートヴィッヒを立たせてベッドのところまで行くと、ベッドに腰掛けてルートヴィッヒを手招きした。
「ほら、早く来いって」
「ここに来るならその、膝枕……は必要ないんじゃないのか?」
「いいじゃねえか、俺がしたいんだし」
「な……っ!  そんなことしてもらわなくても寝られる!」
「でも俺が見張ってねぇと絶対お前仕事し出すからな。あ、腕枕のほうがよかったか?」
「~~~っ、わかった!  わかったから!」
そう言って、ルートヴィッヒは渋々ギルベルトの元に行って膝の上に頭を乗せた。
「……おいヴェスト、なんでそっち向くんだよ」
「……」
「なあこっち向けって」
「…嫌だ」
「なんで」
「……恥ずかしいからに決まってるだろう」
「そっか、ならこれはどうだ?」
そう言うとギルベルトはルートヴィッヒの身体をくるりと動かして上を向かせた。
「……っ!」
目の前にはギルベルトの顔。
それだけで一瞬のうちにルートヴィッヒの顔は紅く染まった。
「真っ赤だな、ヴェスト。あー可愛すぎるぜー!」
「な……兄さん、近いっ……!」
「こうして見守っといてやるから早く寝ろよー」
「む、無理だこんな……」
「じゃあどうしたら寝られるんだ?……こうか?」
「ちょっ、兄さ……」
そうして今度はルートヴィッヒをギルベルトのほうに向かせる。
「これなら寝られるか?」
「……さっきよりいい」
「よし、じゃあ早く寝ろよ!  お前が寝るまで見てるからな!」
「兄さん、」
「なんだ?答えはjaしか認めねえぞ」
「そうじゃなくてだな、その……ありがとう……」
「おう。それじゃあゆっくりお休めよ」
ルートヴィッヒはそう言って微笑む兄に「Gute Nacht」と言って目を瞑った。
「Gute Nacht、ヴェスト」

以前のサイトよりも更に前のサイトに載せていた関係で、初稿の執筆日が分からない文のひとつ。