悠享SSまとめ

昼間と違う

享介、と。片割れが自分の名を呼ぶ声が聞こえる。太陽の下の兄と、月明かりに照らされた兄。その声は同じであるはずなのに、今耳に届くその音は、穏やかで柔らかな昼のものとは全く別の、淫猥な雰囲気すら孕んだような響き。耳元で囁く欲に掠れた声は、更に享介の熱を煽った。

2015/07/03
あなたは蒼井兄弟で【昼間と違う / 先に待ってる】をお題にして140字SSを書いてください。(https://shindanmaker.com/468263

うわごとのように

言葉とも言えないスタッカートのような高い声と、時折混じる自分の名前。下から見上げた弟は、普段は見せることのない顔を隠すことなく晒している。
  彼の赤みを帯びた肌が、締め切ったカーテンの隙間から漏れ出た月明かりに照らされ、「よく似ている」と評される自分でさえ、美しいと感じる。悦楽を追うように夢中で腰を揺らす弟に、少しばかりの意地悪を孕んだ声で問うてみる。
「……享介、楽しい?」
  突き上げるように腰を動かせば、一際高く歓喜した。こくこくと頷く弟の様は、日頃の彼を知る者には、いっそ滑稽にすら見えるかもしれない。けれどそんな弟の姿が酷く愛おしくて堪らなかった。

2015/07/06
あなたは悠介×享介で【うわごとのように / 夢中になるから】をお題にして140字SSを書いてください。(https://shindanmaker.com/468263

専売特許

事後の気怠さを引きずりながら、享介はそっと目を開けた。すぐ近くには自分によく似た、けれど所々違う兄の顔がある。
  自分のことをやんわりと抱きしめながら、穏やかな寝息を立てる片割れ。それは先程までの、指先で、唇で、そして高ぶりで散々享介を翻弄させていたものとは違う。妙に充足感のあるその表情は、見ているこちらまで頬が緩みそうになる。起こさないようにと、享介は静かに手を伸ばした。
  柔らかな癖毛に触れ、頬に触れる。そのまま吸い寄せられるように唇を重ねれば、得も言われぬ安堵感を覚えた。享介は満足げに小さく笑みを零し、再び瞳を閉じた。
  そしてそのまま小さく身を寄せて、享介は意識を手放す。目線の先にあった兄の、そっと瞼を開いたオレンジの瞳に、震える唇に、赤く染まる頬に気付くことなどなく。

2015/07/06
あなたは蒼井悠介×蒼井享介で【横たわり… / 普段はこんな顔しないのに】をお題にして140字SSを書いてください。(https://shindanmaker.com/468263

とっておきの景色を教えてあげる

早く、早くと急かすように弟の手を引く。急に走り出したせいか、彼の声は酷く困惑に満ちていた。走り出した河川敷、向かうのは高台だ。つい先日、偶然寄り道で見つけたその場所。水面がきらきらした星のようで、目を奪われた。その景色はまだ誰にも教えていない。だって一番に見せたかったんだ、君に。

2015/10/22
『とっておきの景色を教えてあげる』『悠享』を描きor書きましょう。(http://shindanmaker.com/62729

指の先のちいさなうみ

――うみのいろだ。一目見たとき、享介はふとそう感じた。穏やかに揺蕩う波間、弾けるような泡沫、どこまでも澄んだ蒼。悠介が手にしていたマニキュアは、まるで海をそのまま閉じ込めたような色をしていた。
  悠介に懇願され、その蒼の装飾を兄の爪に施したのが、つい先刻の話だ。今はといえば、その兄が享介の爪へと小さな刷毛を滑らせ、ひとつひとつ蒼色に染め上げている。愛おしげに指先に触れ、丁寧かつ細やかに塗られていく爪を見つめながら、享介はぼんやりと想いを傾けた。
  まるで海に爪先を浸しているかのように、先端から蒼に染まってゆく。爪の先から海が自身に浸食して、やがて海に溶けてしまいそうな感覚。吸いこまれそうな海に溶けてしまうならばいっそ、既に指先に海を湛えた兄も一緒に溶けて、そうしてひとつに戻れたらいいのに。そっと伏せた目線は、しかしすぐに朗らかな声で引き戻されることになる。
「……できた!」
  悠介の声にはっとして、享介は顔を上げた。柔らかな陽光を受けて光る海面のような指先に、無意識のうちに享介の瞳には輝きが増す。兄と同じ、小さな海を閉じ込めた自身の爪に思わず目が奪われるようだった。
  享介が自身の指先を眺めていると、不意に視界にもうひとつの手が入ったことに気が付いた。どうやら、悠介が享介の手に触れようとしているらしい。
  享介とて悠介に触れたいのは山々だが、生憎今はまだマニキュアを塗ったばかりだ。完全に乾燥するまでにはもう少し時間を要すことを、享介は知っている。待って、と声を掛けて制すると、僅かに目の前の悠介の表情が揺らぐのが見て取れた。
「今はだめ。……乾いてから、な?」
  諭すように言葉を続ければ、今度はあからさまにむくれたような表情へと変わった。これは後でご機嫌取りをするしかないな、と享介は内心独りごちる。まあ、「ご機嫌取り」というよりは、ただ単に享介が悠介に触れたいだけなのだけれども。
「……それなら、さ」
  先程までの拗ねた表情が、瞬間、和らぐ。口を開いた悠介を見遣れば、間を置かず、悠介が距離を詰めてきた。蒼に染め上げられたばかりの指先には触れることなく、けれど近づく顔と顔。そのまま距離は縮まり、唇同士が重なった。
  ――いつか海に溶けることになったとしても、そのときもきみと。指先に光る小さな海だけが、ふたりのことを見つめていた。

2015/10/28
Twitterのフォロワーさんとお話していたマニキュアの話を書き起こさせていただきました(Special Thanks:りるさん)

電車内にて

がたんごとん。電車に揺られる帰り道、ふと肩に重みを感じ、享介は隣を見遣る。寄りかかるように眠るのは他でもない、悠介であった。
  仕事の後なのだ、きっと疲れているのだろう。幸い自宅の最寄り駅まではまだ時間があるから、もう少し寝かせておいてあげることにしようか。内心そう独りごちた享介は、少しばかり兄の方へと身体を寄せる。
  人知れず彼の手を握れば、そこから伝わってくるのは普段よりも僅かに高い体温。その温度が妙に心地良くて、思わず瞳を閉じたくなる。兄の体温を感じたまま夢の世界へと旅立てたら、どんなに気持ちの良いことだろうか。けれど悠介を起こす使命がある以上、その願望は叶えることができなくて。
  帰宅すればきっと、いや絶対に。今夜は悠介の温もりに包まれたまま眠ろうと、享介は密やかに誓いを立てた。

2015/12/31
『相手の肩にもたれかかって眠ってしまった』『悠享』を描きor書きましょう。(https://shindanmaker.com/62729

するの、しないの

目の前で手がさ迷う。行き来する兄の手に、得も言われぬもどかしさを感じた。早く、早く触れてほしい。あの温かな手で、早く。一秒、また一秒。時間が経つ程にその気持ちは募ってゆく。だから享介は口を開く。するの、しないの、と。行き場を決めかねていた手は真っ直ぐと伸び、享介の肌へと触れた。

2016/07/03
あなたは悠享で【ふるえながら / するの、しないの】をお題にして140字SSを書いてください。(https://shindanmaker.com/468263

Holding hands

「悠介、準備できた?」
「んー、あともうちょい!」
  玄関先で靴紐を結びながら、享介は未だリビングにいるであろう兄に声を掛けた。直ぐに返ってきた彼の声は些か慌て気味で、そんなに焦っていては転んだり何処かに身体をぶつけたりはしないだろうかと内心思う。けれどもそんな些細な心配は余所に、準備を整えた悠介がばたばたと享介の方へやってきた。
「ゴメン、お待たせ!」
「いいよ。……じゃ、行こっか」
  享介が玄関のドアを開けると、朝の澄んだ空気が肺へと入り込んでくる。視界に飛び込んできたのは、何処か紫掛かった朧気な空の色。小鳥たちも未だ休息を取っていて、彼らの囀りさえ耳には入ってこない。それほどまでにしんと静まり返っているような、そんな時間のことであった。
  今日は朝からふたり揃っての撮影が入っている。だが撮影を行うスタジオまでの距離が遠く、更に開始時刻も早いとあっては、早朝に家を出ねば間に合わないのだ。幸い監督が車で送迎してくれることになってはいるが、駐車場の都合上、結局最寄り駅の付近まで歩いていかねばならなかった。
  これほど早い時間に起床するのは、思えば久々かもしれない。けれど昨日は比較的寝付きも良かったため、さほど眠気も残らずにしっかりと目覚めることができた。一方で悠介はといえば、未だ眠たげに欠伸をしている。とはいえ兄のことだ、本番までにはきっちりと目を覚ますであろうと、享介は何処か確信めいたものを感じていた。
  すると不意に享介、と名を呼ばれる。享介がその柔らかな声色を視線で辿ると、にこりと笑みを浮かべる悠介の姿を認めた。
「ね、享介。手ぇ繋がない?」
「手?」
「うん。……監督の車まで、ね?」
  そう口にするなり、悠介は首を小さく傾げながら手を差し出す。確かに今は早朝。人はおろか、辺りには野良猫一匹いやしなかった。普段の享介ならば、誰かに見られるかもしれないからと、やんわり断りを入れていたかもしれない。だが誰にも見られていないはずの今、享介に彼の手を拒む理由など存在しなかった。
  こくりと頷きながら、自分とよく似たかたちの左手をとる。瞬間、隣にいた悠介が酷く幸せそうに頬を緩ませた。そんな片割れにつられるようにして、享介もまたその顔に花を咲かせる。繋がれた手と手は、どちらともなく強くしっかりと結びついた。
  ――今日もまた新しい一日が始まる。大切な半身の隣で。

2016/08/10
30日CPチャレンジ/1.Holding hands(手を繋ぐ)

Cuddling somewhere[悠(→)←享]

リビングのソファに腰掛けながら、享介はひとりぼんやりとテレビを見つめていた。特に見たい番組があるというわけではないが、如何せん他のことをする気分にはなれず、かといって別段眠気が襲い来ることもない。故に幾度かチャンネルを切り替えた後、享介は無造作にリモコンを置いた。
  ふう、とひとつ溜め息をついて、近くにあったクッションをぎゅっと抱く。どうにも手持ち無沙汰で何気なくクッションに顔を埋めれば、ここにはいない兄の香りがしたような気がした。
(悠介……)
  一体今は何処にいるのだろうか、彼は。享介は兄へと想いを傾ける。今日のふたりはといえば、全く別の仕事が入っていた。そのため悠介がどんな現場に向かっているか知ってはいるものの、「今」何処にいるかまで知る由はない。悠介のことだ、恐らくは仕事が終われば真っ直ぐこの場所へと戻ってくることだろう。心配はしていない。けれども寂寥感を覚えると共に、何故か安心しているような気さえしていた。
  ――正直そろそろ限界であった。悠介を見る度に、悠介のことを考える度に、享介の心は突き刺されるような痛みを感じる。こんなに苦しい想いなんて知りたくなかったと、何度思ったことだろう。けれど自身の身勝手な恋情で悠介を傷つけることだけはしたくなかった。
  だからこそ幾度も想いを捨てようとしたが、それでもやはり享介には捨て去ることなどできなかった。ならばいっそ悠介に悟られぬよう、恋情は心の奥底にしまい込んでしまおうと、そんな思いで今日までひた隠してきたのだ。だがそんな理性と相反するように、兄への劣情は日々募るばかりであった。
  恋慕、そして葛藤。頭の中でぐるぐると駆け巡るそれらは、考えれば考えるほどに深みへと嵌まってしまう。けれども直に帰ってくるであろう兄にこの想いを悟られることだけはあってはならないと、享介は必死に感情を押し殺すべく両目をぎゅっと閉じた。
  そのときであった。きい、と玄関の扉が開く音がする。ゆっくりとした足音は次第に近づいてきて、それからリビングのドアが開かれた。
「ただいまー、……って享介?」
  寝てるの、と控えめな声で呟く悠介の声が耳に届く。その声に思わず息を凝らせば、悠介は静かに享介の方へと近づいてきた。
「……そんなとこで寝てたら風邪引くよ、享介」
  悠介の吐息が顔を掠める。普段触れることのないその距離に吐息を感じ、享介の心臓はどきりと跳ねた。それから気配が少しだけ遠のいて、悠介の手が享介の髪へと 触れた。髪を撫でる悠介の手付きは酷く優しい。だからこそ余計に享介は泣きたい気分になった。
「享介、今日も疲れたのかな。……お疲れさま」
  一通り享介を撫でて満足したのだろうか、悠介の手がそっと離れていく。それからすぐに悠介の気配さえも遠のいていくように感じた。先程まで泣きたい気持ちでいっぱいであったはずなのに、離れていくとなると何処か寂しさを覚える。
  待って、行かないで、と。今すぐ目を開いてそう訴えれば、彼は戻ってきてくれるのだろうか。……抱きしめてくれるのだろうか。問いかける勇気など、今の享介にありはしなかった。

2016/08/11
30日CPチャレンジ/2:Cuddling somewhere(どこかでもふもふ、ぎゅー)

With animal ears

うさぎの悠介×トラの享介(ふたりは兄弟じゃない)
うさぎの悠介にはうさぎの享介、トラの享介にはヒョウの悠介という兄弟がいる
彼らは獣人的な何かです

――どうしてこうなったのだろう。
  見目だけで言うならば、彼は大層似ていたのだ。享介の大好きな兄に。ふわふわ柔らかな蜜柑色の髪も、きらきらと瞬くトパーズの瞳も、本当にそっくりだった。ただ決定的に違うのは、蜜柑色の髪から真っ直ぐ太陽に向かって伸びている「耳」。それから綿毛のような「尻尾」。そう、彼と兄との相違点――それは「種族」だ。
  享介はトラである。丸みのある耳に、長く垂れ下がった尾。それらには綺麗な縞模様が入っていて、おまけに立派な歯だって持っている。そんな誇り高き種族だというのにどうだ、この現状は。享介はふと我に返った。
  目線の先には兄によく似た「彼」。その向こうには雲ひとつない青空が広がり、柔らかい芝生が享介の身体を包む。一体どうしてこうなったのであったかと享介が逡巡しかけたそのとき、目の前の彼――悠介が口を開いた。
「おーい、大丈夫?」
  二回りほど小さな体躯を持つ彼は、身体の上にのし掛かったまま享介の顔の前で手を翳す。どうやらぼんやりとしている享介の反応を確かめているらしい。小さな手が顔の前でひらひらと揺れて、享介は顔をしかめながらその腕を取った。
「なにしてんの」
「あ、起きてた?」
「……起きてるけど。ていうか退いてよ」
「えーっ、退かないよ」
  身体の上から退くようにと享介が口にすれば、兄によく似た頬をぷくりと膨らませて、悠介は首を振った。肉食獣に手を捕まれたままだというのに、彼は特に気にしてはいないらしい。それどころか怯むことなく、自ら進んで享介に触れてくる始末である。
  少しでも力を加えれば折れてしまいそうなほどか細い腕。自分よりもずっと軽い体重。彼を無理矢理退かせることも、享介にとってはそう難しいことではないだろう。けれども兄と似たような容姿を持つ彼に対して無茶をしようなどとは、どうにも思えなかった。それどころか享介は、自分が触れることでこの貧弱な存在を壊してしまわないだろうか、という漠然とした恐怖さえ感じていた。
  不意に純真な瞳と視線が絡む。無意識の内に奥歯を噛み締めれば、ぎり、と微かな音が鳴った。視線の眩しさに耐えかねて、享介はそっと彼から目線を外す。そして手のひらを解き、握ったままであった彼の細い腕を解放した。
「……なんでこんなことするの」
  そう小声で問いかければ、彼は首を傾げる。まるでその問いの意図が分からないとでも言うかのように。けれどもきょとんとした表情はすぐに柔らかくなり、彼の唇はゆっくりと弧を描いた。
「……だってオレ、もっとお前のこと知りたいなって」
  瞬間、享介の耳にぽす、という音が入ってくる。音の方を一瞥すれば、そこに伸びていたのはすらりとした肌色だ。そうして漸く享介は気が付いた。今し方聞こえた音は、彼が享介の顔のすぐ傍に両の手をついたときのものであることに。そして現在のこの体勢は、傍から見れば先程よりもずっと明確に「押し倒されている」状態なのだということに。全てを理解したそのとき、享介は身体中の熱が顔に集中していくのを感じた。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「やだ。待たない」
「ねえ、待ってってば……!」
「今の享介の顔、すっごくかわいい」
「そんなの知らないよ……!  っ、ん」
  大して抵抗もできぬまま、享介の頬には柔らかなものが降ってくる。その正体など、いちいち考えるまでもない。彼の唇に決まっているのだ。微かなリップ音が耳に届き、そのことが更に享介の顔を赤く染め上げた。
  ばくり、ばくり。忙しなく響く心臓の音がうるさい。少し前まで純真だと思っていたその瞳は、今や見る影もなく熱を孕んでいた。いや、ただ享介がそう思い込んでいただけで、トパーズの瞳は最初からこうだったのかもしれない。今となっては確かめる術などないが、果たしてどうだったのであろうか。
  一体どうしてこうなった。まさか兄によく似た小動物に押し倒される日が来るなど、誰が予測なんてできようか。この胸の高鳴りは彼が兄に似ているからなのか、それともまた別の理由なのか。今の享介はまだ気付かない。ふう、と覚悟を決めたように溜め息を吐いて、享介はそっと身体の力を抜いた。

2016/08/28
30日CPチャレンジ/10:With animal ears(獣耳)

黒は白に焦がれる[DWL/悪魔悠→天使享]

愛しいあの子が飛び去った。何度でも、君を連れ戻しに来るからと。柔らかな純白を一片残し、天使の君は光のほうへと羽ばたいた。欲望に身を賭した自分の羽とは違う、清らかないろだ。焦がれてやまない、君の白。
  どうしても触れたくなって、耐えきれずにそっと指先を伸ばす。けれどもそれはあっという間に黒い焔に包まれて、跡形もなく消え去ってしまった。
  ――嗚呼。こんな穢れた身体では、到底君には触れられないや。

2017/05/29

もっと甘やかさせて

目の前のオレンジが揺蕩う。何かを訴えかけるように、ゆらりと。けれども彼は こちらを見つめてくるだけで、一向に触れてこようとはしなかった。こんなときくらい素直になればいいのに。くすりと笑みを零し、火照る頬に触れる。普段しっかり者のきみだからこそ、目一杯甘やかしたくなるのだ。そっと目を伏せた弟に、唇を寄せた。夜はまだこれから。

2017/10/11
千蓮の悠享の『甘やかしたくなる』という台詞を使った「エロティックな場面」を作ってみましょう。(https://shindanmaker.com/74923

本気にしないよ、それでいい?[悠→←享]

好きだときみに告げられた。射抜かれるような、まっすぐな瞳。それはきっと嘘偽りのない、真実を告げる瞳。けれど、俺は弱いから。いつかきみが離れていくのが怖い。やっぱり違うと、そう告げられるのが怖いのだ。だから、ごめん。本心を告げない俺を許して。痛む胸を抑えながら、唇を震わせた。

2017/10/11
貴方は千蓮の悠享で『本気にしないよ、それでいい?』をお題にして140文字SSを書いてください。 (https://shindanmaker.com/587150

Je to veux.


「ほしいもの?」
「そう、なにかない?」
  兄からの突然の問い掛けに、思わず首を捻る。ほしいものだなんて、そんなの決まりきった答えだ。切望してやまないのは、物やお金なんかじゃない。いつだって、ひとりだけだ。
  ――悠介、と。そう小さく口にすれば、目の前の顔がぶわりと色付く。それが酷く可愛く思えて、勢いに任せて唇を寄せた。たまにはこういうのも悪くない。

2017/10/11
貴方は時間があるなら『欲しいものない?ってきかれてお前って答えちゃう千蓮の悠享』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。(https://shindanmaker.com/524738

コンビニスイーツ

ふと気が向いて、悠介はふらりとコンビニに立ち寄った。いつもついつい向かってしまうのは、スイーツのコーナーだ。
  少し低めの冷蔵棚を、端から順に追っていく。すると途中で目に留まったのは、「新発売」のシールだ。一度見つけてからというものの、器に入った小ぶりのパフェがなんだかきらきらと輝いて見えて、それしか見えなくなっていた。
  残りはちょうどふたつ。買って帰れば、きっと享介も喜んでくれるだろう。そんな確信をしながら、悠介は棚に手を伸ばした。
  それから足取りも軽く帰路に就いて、がちゃりと玄関の扉を開く。ただいまと口にしてキッチンへ向かえば、そこには帰宅したばかりと思しき弟の姿があった。
  あのさ、とそう言いかけた刹那。なにかに気が付いたらしい弟の口から、間の抜けた声がする。
「もしかして、コンビニ寄った?」
  そう問うてくる彼の言葉に頷けば、くすくすと笑みを零し始めた。
「……俺たち、おんなじやつ買ってきたかも」
  手にしていたビニール袋を開き、享介はほらとこちらに見せてくる。そこには見慣れたスイーツがふたつ鎮座していた。
「あはは。ホントおんなじこと考えてるんだな、オレたちって」
  顔を見合わせながら、ふたりして腹を抱える。ああ、やっぱり享介と一緒だと飽きないや。あとでしっかり味わうのを心待ちにしながら、4つのパフェをそっと冷蔵庫へと収めたのであった。

2017/11/10

あらしのよるに

びゅうびゅうと風鳴りがする。柱は軋み、がたがたと鈍い音を立てていた。そういえば台風が近いんだっけ。そんなことをぼんやり思っていると、隣にいた兄が不意に「風が強いね」と呟いた。既に睡魔がすぐそこまで迫ってきているのだろうか。彼の瞼は今にもくっついてしまいそうだ。
  少し前まで熱を分けあっていたとは思えないほどの、至極穏やかな時間。持て余した身体の火照りを逃がすように、享介はそっと寝返りを打とうとする。けれどもあっさりと阻止されて、気がつけば悠介の腕の中へと閉じ込められてしまっていた。
  とくり、と心が小さく跳ねる音がする。間もなくして、いかないで、と寝言のような言葉が降ってきた。もう半分寝てるじゃん。そう独りごちた声は、果たして兄に届いているのだろうか。くすりと笑みを溢しながら、もう少しだけと身を寄せた。

2017/11/10

密会

開け放たれた窓から、ひゅうと風が吹き込む。白いカーテンがふわり、柔くはためいた。放課後の喧騒から離れた空き教室は正しくふたりきりの世界。心地のよい背徳感が背筋をそっと撫で上げる。
「いい?」
「……今更」
  耳を赤く染めたキミが酷く愛おしい。目の前のアンダーリムを外し、静かに唇を寄せた。

2017/11/10

「享介!  ポッキーゲームしようぜ!」(ポッキーの日フライング)


「ここにポッキーがあります」
  そう言いながら、見慣れた赤い箱を手にしていたのは他でもない、兄である。突拍子のないことを言い出すのは今に始まったことではないが、しかしだ。一体何がしたいのかわかるような、わからないような。首を傾げながら念のため問いかければ、返ってきた答えは案の定なものだった。

2017/11/10

「肉まん、食べたくなってきちゃった」

寒いね、と隣で兄が笑う。ついこないだまで袖の短い服を着ていたというのに、まるで嘘みたいだ。陽が落ちるのが随分と早くなった今日この頃、そろそろ防寒具を出しておこうと心に留めた。
  ――ああ、こんな寒い日には「アレ」が食べたくなるな。そう思い口を開けば、ふたつの声が綺麗に重なったのだった。

2017/11/16

雨音に紛れてしまえと願えども、

傘に滴る雨粒が、跳ねるような音を奏でる。降水確率ゼロを謳っていた天気予報も、見事外れてこの有り様だ。折り畳み傘を持っていたのは俺だけで、結局身を寄せながら狭い傘で雨を凌いでいる。
  非日常の距離に、弾む心音。雨足が強くなれば、聞かれずに済むのに。兄の冷たい唇が重ねられたのは、数秒後のことだった。

2017/11/17

双子悪魔とある部下の憂鬱(アルエル/モブ視点)

憂鬱な気持ちで今日も重い扉の前に立つ。ノックに対する返事がないのはいつものことだった。
「失礼します」
  扉の先、椅子に腰かけるは直属の上司。冷ややかな緑の相貌が、邪魔をするなと言外に伝えてくる。膝上では衣服の乱れた弟が、物欲しげに兄を見つめていた。
  ――嗚呼、だから入りたくなかったのだ。

2017/11/18

余裕がなくてごめんね

気が付いたときには既に、弟の顔が眼下にあった。朧気にしか思い出せないきっかけなんて、今はどうでもいい。ただ享介が欲しくて堪らなかった。必死かよ、と笑う弟はどこか余裕そうで、内に燻る火種がどっと燃えあがる音がする。
「……余裕がなくて、ごめんね」
  ぽつりと零して、目の前の唇に噛みついた。

2017/12/17
千蓮の悠享さんは『余裕がなくてごめんね』をお題に、140字でSSを書いてください。
https://shindanmaker.com/320966

年越しも、きみと

ふたりでこたつに足を突っ込みながら、そのときを待つ。テレビからはカウントダウンの番組が流れ、刻一刻と新たな年の始まりが近づいていた。
「今年もありがとう、悠介」
「オレのほうこそありがとう」
  笑んだ兄の手が、享介のものにそっと重ねられる。温かなぬくもりに包まれながら、どちらともなく口づけを交わした。

2017/12/31
2017年書き納めでした

今年の勝負もドロー

バレンタインは昔から嫌いではなかった。女の子からはチョコが貰えるし、甘いのも嫌いではないし、なにより享介と数を競う「ゲーム」が楽しかったから。だが、いつからだろうか。享介からのチョコが欲しいと思うようになったのは。
  今年は恋人になってから、初めてのバレンタイン。享介に貰うならば、自分も用意したほうがいいだろうか。そう思い、弟に宛てるチョコを唸りながら選んだのも、今となってはいい思い出だ。
  ――さあ、あとは渡すだけ。悠介はすう、と大きく息を吸い、口を開いた。
「享介」
「悠介」
  空気を震わせた互いの名が重なり、宙に溶けて消える。どちらともなく笑みながら、ふたりは甘い贈り物を渡し合った。

2018/02/14
2018年バレンタインSS

あるありふれた嘘のはなし

「……やっぱりさ。ムリだったんだよ、オレたち」
  突然放たれた言葉に、享介は思わず目を見開く。雷に打たれたかのように身体が竦み、心臓が破裂しそうなほど音を立てた。
  なに言ってるの、と。そう聞き返したいのに、ただはくはくと唇を戦慄かせることしかできない。漸く絞り出せた声でさえ、無惨にも掠れてしまっていた。
「なん、で……?」
  一体何を間違えたのだろう。どこで足を踏み外したのだろう。もう戻れない関係に終わりが来るとすれば、それは永遠の別離だ。問い掛けても問い掛けても出ない答えは、やがて冷たい雫となって滴り落ちた。
「待って、享介なんで泣いてるの……!?」
「なんでって、っ……おまえが、もうムリとか言うから……、だろ」
「ジョーダンだってば、ジョーダン!  ほら、今日エイプリルフールだし!」
「……え?」
  どこか焦った様子の悠介に、普段より低い声が自然と漏れる。大方、エイプリルフールの嘘を真に受けるとは思わなかった、というところだろうか。じとりと視線を遣れば、悠介は少しだけ縮こまっていた。
「……冗談でも、言っていいのと悪いのがあると思うんだけど」
「ゴメン」
「……ほんとに俺のこと、嫌になったのかと思った」
  くい、と悠介の服の裾を掴み、享介はぽつりと呟いた。覚えた不安を、隠すことなく吐露するように。すると悠介の腕がおずおずと伸びてきて、享介を抱き込む。なすがまま身体を預けると、それまでよりも少しだけ、悠介の腕に力が籠った。
「イヤになんてなるわけないだろ。……享介のこと、大好きなのに。ウソなんかじゃなくて、ホントに」
  不安にさせちゃってゴメン。そう続くはずだった悠介の言葉をかき消すように、享介は自ら唇を寄せた。
「……これで、許してあげる」
  不意打ちのキスに、紅潮する頬。目を見開いた悠介に、享介は悪戯な笑みを浮かべた。/p>

2018/04/01
2018年エイプリルフール

元気の源

FRAMEと共に掴み取った栄養ドリンクのCM撮影は、無事終了を迎えた。撮影スタッフからもなかなか好評で、CMの放映が待ち遠しいくらいだ。
  そんな悠介と享介が揃って帰宅したのは、夜もとっぷりと更けてからのことだった。
「きょーすけぇー」
  間の抜けた声を出しながら、悠介がやんわりと抱きついてくる。悠介の唐突な行動など、享介にとっては日常茶飯事だ。どうしたのと口にしながら悠介の背に腕を回すと、享介の身体はそのままぐい、と抱き寄せられた。
「ヘヘ、享介充電中ー」
「もう、なにそれ」
「だって享介がいればオレ、元気になれるし。……あ、結局ドリンクいらず?」
「……だから、それじゃCMの顔的にはダメだろって……。でも、ま、俺も同じか……」
  からからと笑う悠介につられて、思わず享介の頬も緩む。だが、片割れがいて元気になれるのは、決して悠介だけではなかった。
  心地よい温もりも、朗らかな声も、眩しい笑顔も。悠介はいつだって、享介に多くのものを与えてくれる。結局のところ、享介を元気にするのも、とろとろに溶かすのも、全部悠介なのだ。
  ――悠介が好き、大好き、と。内側から溢れた感情が、ぽろりと口をついて出る。だがはっと我に返り、享介が自身の口にした言葉を自覚した頃には既に遅かった。
  一瞬だけ目を見開いた悠介の顔には、たちまち満開の花が咲く。享介を抱きしめる悠介腕の力は、先程よりもずっと強くなった。
「オレも。……オレも、享介大好き!」
「うん……。……知ってる、けど……嬉しい」
  どちらともなく唇を寄せ、ふたりはゼロ距離で交わる。ただそれだけで、一日の疲れなどすべて消し飛んでしまうようだった。

2018/05/03
Sミラフェス2018で頒布した無配SSその1。AP SUPERのお話でした。

外れた首輪(総泰)


「……ねえ、兄弟」
  ゆるりと穏やかに流れる午後の時間。総志と共に自室で過ごしていると、不意に声が掛けられた。膝上にある総志の頭を撫でながら、泰志はなあに、と柔らかく返す。すると総志は横たわったまま、ゆっくりと遠くを指さした。
「アレのことなんだけど……」
「アレ?」
  泰志は総志の指差す先を見遣る。目で辿った先にあったのは、ライムグリーンを基調とした首輪だった。
  以前に総志から贈られたその首輪は今、紆余曲折を経て泰志の自室にある。だが果たして、首輪がどうしたというのだろう。泰志は首を傾げた。
「首輪がどうしたの?」
「兄弟はアレ……どうするの?」
「うーん。せっかく総志から貰ったんだし、大切に取っとくつもりだけど」
「そう、大切に……。フヘヘ……」
  泰志が至極当然のように言えば、総志はどことなく嬉しそうに頬を緩ませる。首元に総志の腕が伸びてきて、そのままぐい、と身体を引き寄せられた。
  キスを求めてくる総志に応えて、泰志からも唇を寄せる。乾いた唇が何度か重なりあい、総志が軽いリップ音を立てて離れていった。
「じゃあさあ、時々ならアレ……使ってもいい?」
「使うって……、えー?」
  総志の言う「使う」とは、十中八九「行為」での使用を指しているのだろう。すぐに思い当たった泰志は、半ば笑い声を漏らしながら、僅かに逡巡してみせた。
  それでも、決して嫌な訳ではないのだ。そもそも泰志が本気で嫌がることを、総志はしようとはしないのだから。
「……大切に使ってくれるなら、いいよ?」
「ンフフ……。ありがとぉ、兄弟」
  ――兄弟もアレも、大事にするからね。
  愛しげに続けられた総志の言葉に、とくりと心臓が跳ねる。どうしようもなく溢れ返る想いに突き動かされるまま、今度は泰志からキスを求めた。

2018/05/03
Sミラフェス2018で頒布した無配SSその2。同日に頒布した『僕と兄弟の相愛的軟禁セーカツ』の後の話でした。

しあわせの温度


「悠介、起きなよ! 朝だよ!」
  早朝の冷気が肌を撫でたのと時を同じくして、馴染みの良い声が悠介の耳を通り抜けた。布団の中との急激な温度差に、思わず身体をぶるりと震わせる。どうやら掛け布団は、声の主により無理矢理剥がされたらしい。
「うぅ……さむい……あとごふん……」
「そんなこと言って五分じゃ済まないでしょ、どーせ」
  ほーら、起きて。悠介を起こさんとする享介に軽く身体を揺すられながら、悠介はううんと小さく唸った。
  それにしても、だ。あまりの寒さに、悠介は適当に手に触れた布を手繰り寄せる。どうやらこれは毛布らしい。これだけではまだ幾らか寒さは残るが、ないよりはましだろう。暖を取ろうと丸くなれば、頭上からは大きな溜め息が降ってきた。
  まったくもう、だとか、いつもなんだから、とか。ぼうっとする頭のまま、ぶつぶつと小言を洩らす弟のほうへ視線だけを遣る。彼自身も起きて間もないのだろうか、寝間着のままで悠介の掛け布団を手にしていた。
  ――あったかそうだな、と。悠介の頭にふとそんな思いが浮かぶ。ゆるゆると身体を起こし、悠介は眠気で蕩けたままの瞳で、享介を見つめた。
「きょーすけ」
「なに、ゆうす……!?」
  腰に手を回し、そっと引き寄せる。突然のことに享介は掛け布団を取り落としたようだが、今はどうでもよかった。
  そのままベッドの上へと導いて、享介ごと毛布を被る。隙間など見当たらないくらいに抱き締めてしまえば、腕の中の享介が呆れたように、けれどどこか満更でもなさそうに呟いた。
「……ちょっと悠介、寝ぼけてるでしょ」
「んー?  きょーすけあったかいなあ……」
  思いのままにはらりと笑みを浮かべれば、目の前の享介もふっと頬を弛めた。仕方ないなあ、と零れた彼の声色は柔らかくて、そのことが悠介の心さえも温かく染め上げていく。
  離れがたい温もりが、すぐ傍にある。この温もりに名前をつけるならば、きっとしあわせと呼ぶのだろう。
  ――だからもう少しだけ、このままでいさせて。

2018/12/06

星海ポエティカ(カスポル)

蒼い海に浮かぶ星屑をひとつ摘まみ、そっと口へ含む。それは金平糖のようにあまく、ぱちぱちと弾けては、舌先でふんわり解けていった。
  まるできみのようだと、心の中でそっと独りごちる。ひどく優しくて、なおかつどこか儚くて。これからはずっと一緒だよ、と。かつてきみが与えてくれた誓いは、今もなお鮮明にぼくの記憶へと焼き付いていた。
  それでも時折、どうしても思い出してしまうのだ。靭やかなきみの体躯が、眼前で射抜かれたときのことを。そして、きみのいない空虚な日々のことを。決して叶わぬ忘却をねがう痛みは、この先も永遠にぼくを苦しめるのだろう。……けれど。
「――ポルックス!」
  背中に当たるあたたかな声に引き寄せられるように、ぼくはゆっくりと振り向く。そんなところでどうしたの、と言葉を続けながら、きみは柔く穏やかな笑みを湛えていた。
   ああ、なんとしあわせなのだろう。きみが隣にいてくれるだけで世界は煌めき、鮮やかに彩られていく。そうしてぼくの内側にある隙間は、いつの間にかきみに埋められているのだ。欠けてしまった心の破片はきっと、きみのかたちをしているに違いない。だってきみはいつもぼくのほしい言葉を、気持ちを、絶え間なく注いでくれるのだから。
  同じように、ぼくもきみの心を満たせているだろうか。――いや、考えるまでもないか。だってぼくたちは、ふたりでひとつの双子星なのだから。
  静寂な星海のまんなかで、今日もまたきみの手を取る。なによりも明るくひかる瞳の奥には、ただひとりだけが存在していた。

2020/07/09
双子星ちゃん

怖い夢を見た[悠←享]

対峙した兄の瞳に映るのは、紛れもない嫌悪と拒絶。そこには温もりなど見る影もなく、ただ冷淡な色を纏っていた。
  悪いのは自分だ。越えてはいけない一線を踏み越えたのは、他でもない自分だから。飛び起きたベッドの中で、幾度となく深呼吸する。胸を巣食うこの感情に、名前なんていらないのに。

2020/09/02
あなたが千蓮の悠享で書く小説(・SS)のお題は、『怖い夢を見た』です。(https://shindanmaker.com/531642